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項目の内容

  1. 盲導犬とは
  2. 盲導犬はかけがえのないパートナー
  3. 盲導犬は『無償貸与』
  4. 盲導犬はどこで生まれるの
  5. 盲導犬はどこで育つの
  6. どうやって訓練するの
  7. 盲導犬の活躍
  8. 盲導犬ユーザーの声
  9. 盲導犬の引退時期
  10. 盲導犬にならなかった犬はどうなるの?
盲導犬とは
盲導犬とは、視覚障がい者を安全かつ快適に誘導する犬のことです。
盲導犬の歴史:
約1万2千年前の遺跡の発掘品から、そのころ既に人間と犬が共に生活していたことが知られているように共存の歴史は長く、古くは住居や食糧庫の見張りや狩猟の手伝いなどをする存在でした。イタリアの古代都市ポンペイの壁画には視覚障がい者を誘導する姿が描かれています。
1819年、オーストリアの神父ヨハン・ウィルヘルム・クラインが視覚障がい者を誘導するために犬を訓練したのが、正式な盲導犬の発祥であるといわれています。本格的に事業として育成が開始されたのは、1916年第一次世界大戦後のドイツにおいてです。戦争により目が不自由になった軍人のために盲導犬が育成され、やがてヨーロッパの各地やアメリカなどで盲導犬育成の事業が開始されました。
日本では、1938年にアメリカの盲導犬使用者が来日した際に紹介され、翌年にドイツから4頭の盲導犬が輸入されました。しかし、その4頭が亡くなった後は、しばらく盲導犬が不在の時代が続きます。1957年に国内ではじめての日本人の手による育成で「国産第一号」の盲導犬が誕生します。その後、国内9ヶ所に盲導犬協会が設立され事業としての育成が開始されました。現在でも、北から北海道、栃木、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の9協会12施設で、年間約185頭の盲導犬が育成されています。
現在、全国で盲導犬を希望する視覚障がい者7,800人(推計)に対して盲導犬の実働数は約1045頭 (2009年3月31日現在)。日本ではまだまだ盲導犬が不足している状態です。
2002年に「身体障害者補助犬法」が施行され、盲導犬をはじめとする補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の公共施設、不特定多数の利用する施設(デパート、ホテルなど)への受け入れに関する環境が整いました。
盲導犬の役割:
人間には視覚、聴覚、触覚などいくつかの「感覚」があり、それらの感覚を通して外界から情報を取り入れながら日常生活を送っています。人間は全ての情報の約80%を視覚から取り入れているといわれ、視覚障がい者が安全に歩行するには困難が伴うため、何らかのサポートが必要です。
視覚障がい者の歩行手段は主に3種類あります。
・他の人の手引きを受けて歩行する。
・白い杖(白杖:はくじょう)を使用して歩行する。
・盲導犬を使用して歩行する。
視覚障がい者の方それぞれが自身の生活に合った方法を選びます。
盲導犬との歩行:
盲導犬使用者は目的地までの地図、道順を把握し頭の中にイメージしながら、それに応じて盲導犬に適切な指示を出します。盲導犬は安全に歩行するためのサインを送り、盲導犬使用者はハーネス(胴輪)を通してそれを感じ取る、といういわば「共同作業」によって、安全で快適な歩行を可能にします。
盲導犬の作業:
・道路の端に寄って歩く
・段差で停止する
・角で停止する
・障害物を回避する
・近くの目的物に誘導する(ドア、階段、改札口など)
盲導犬としてよくみられる犬種:
・ラブラドール・レトリバー
・ゴールデン・レトリバー
・ラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバーのミックス(一代雑種)
犬種が持っている特徴として、性格が温和であること、作業意欲が高いこと、身体の大きさが人の誘導に適していること、などが求められます。しかしながら、これらの犬種の犬ならすべて盲導犬に適しているというわけではなく、より盲導犬に適した子を増やすため、素質のある血統を持った親犬同士を使っての計画的な繁殖が取り組まれています。

盲導犬はかけがえのないパートナー

盲導犬の役目は単なる歩行手段だけではありません。いつも一緒にいて心を慰め、癒してくれる存在です。そして、外へ一歩踏み出す勇気と自信を与えてくれるのです。盲導犬は盲導犬ユーザーにとって心の支えであり、社会生活を送るうえでかけがえのないパートナーとなるのです。

盲導犬は『無償貸与』

一人でも多くの視覚障がい者に盲導犬を持つ機会が得られるように、当協会では無償で盲導犬を貸与しています。

盲導犬はどこで生まれるの

良質な盲導犬を育てるために、盲導犬に適した血統の犬を計画的に繁殖しています。
仔犬は、繁殖ボランティアと呼ばれる飼育ボランティアの家庭で生まれ、生後約50日まで母犬や兄弟犬と一緒に過ごします。

盲導犬はどこで育つの

生後約50日から約1歳になるまでは、パピーウォーカーと呼ばれる飼育ボランティアの家庭で過ごします。家族の愛情に包まれて育つことで、人に対する信頼感を学び、さまざまな経験を通して、仔犬は社会性を身につけます。
どうやって訓練するの
パピーウォーキングを終了すると訓練センターでの生活が始まります。訓練センターでは約6カ月~1年間、盲導犬として求められる作業や社会的なマナーの訓練を受けます。
盲導犬の場合、「訓練をする人」と「盲導犬を使用する人」が違う、ということが特徴としてあげられます。人間に服従し命令に従うことだけを学んだ犬は、人によって態度を変えることがあります。訓練士の言うことはよく聞くけれどそれ以外の人に対しては強気な態度で言うことをまったく聞かないのでは盲導犬になることはできません。盲導犬は、人の指示に従うだけでなく、「何をするべきなのか」を自分で考え自主的に適切な行動をすることが求められるため、盲導犬の訓練では犬が進んで行動する意欲・姿勢を伸ばすことが大切です。
盲導犬が楽しく仕事をするために「褒めること=Good」を使って訓練していきます。「叱ること=No」ばかりを使っても、物事を教えることはできますが、犬が仕事を意欲的に行うことができなかったり、訓練士の言うことしか聞かなくなるということがあります。盲導犬は視覚障がい者が扱う犬であり、約8年間仕事をする犬です。そのため、誰の言うことでも聞くように訓練することや犬自身がその作業を楽しんで出来るように褒めて訓練していきます。
訓練には大きく分けて「基本訓練」「誘導訓練」「共同訓練」の3つの訓練があります。
「基本訓練」は「人の指示を聞く態度を作る」訓練です。 訓練は、主に「褒めること=Good」を使って教えていきます。まずは、犬をよく観察し、その犬にできる行動をさせてよく褒め、褒められる経験を多く積ませます。人に褒められる喜びを覚えた犬は、「次は何をしたら褒められるかな」と人に対して期待するようになります。この状態になれば、次々に他の作業を教えることができます。基本訓練では、「座れ」「伏せ」「待て」「来い」「左に付け」など日常生活で使う盲導犬の基礎を教えます。
「誘導訓練」はハーネスをつけて実際の市街で人を安全に誘導できるようにする訓練です。 誘導訓練では、次のような作業を教えることのほか、どのような環境でも同じ作業が出来るように、様々な場所に行き、環境に慣れさせる訓練も同時に行っていきます。
・道の端に寄ってまっすぐ歩く訓練
・障害物(看板・人・車など)の回避訓練
・段差や角のある場所では一旦停止して教える訓練
・電車、バス、エスカレーター、エレベーターへの乗降訓練
・飲食店、デパートなどでのマナー訓練
訓練期間中にはテストが3回あります。
1. TA(稟性評価) :訓練開始から約1ヶ月間で、犬の性格面や健康面を評価します。
2. TP1(作業評価1):訓練開始から約2ヵ月後、担当者がアイマスクをして街中を歩き、基本的な作業の出来具合を評価します。
3. TP2(作業評価2):訓練開始から約5ヵ月後、担当者以外の人がアイマスクをして街中を歩き、担当者以外での、基本的な作業や公共交通機関の利用の出来具合を評価します。
3つのテストに合格し、性格面、健康面、作業面が盲導犬として適していると判断された犬は仕上げの段階に入ります。盲導犬を持たれる方の生活環境や状態に合わせた訓練をします。
「共同訓練」は盲導犬としての作業の試験を合格した犬と、盲導犬使用を希望する目の不自由な方が、訓練センターで寝食をともにしながら実施する訓練です。エサの与え方やブラッシング、シャンプー、排便方法などの犬の世話に関する訓練と、市街地を歩く、交通機関に乗る、飲食店を利用するなどの歩行訓練を行います。訓練の仕上げ時期にはユーザーとなる方のご自宅近くなどで訓練をおこなうこともあります。共同訓練が無事終了するといよいよ本当に盲導犬デビューです。

盲導犬の活躍

盲導犬は視覚障がい者の方の歩行のお供をするだけでなく、視覚障がい者の方の大事な家族、パートナーでもあります。愛されていきいきと生活しています。
盲導犬を使用している視覚障がい者の方の感想を聞いてみました。
「ひとりで自由に歩くことができるので、社会復帰が可能になりました。」
「盲導犬は大切な家族、そして分身です。もう盲導犬のいない生活は考えられません。」
「盲導犬のおかげで体も心も健康!家の中が明るくなりました。」
「これほど活躍してくれている盲導犬に対して、一般の方々の理解を切望します。」

福澤 英雄さん&リチャード号

視覚障がい者にとっての難点は何と言っても情報が伝わらないことと行動が制限されること。最近は携帯やパソコンも普及して情報の入手は改善しきているようだけれど、外出だけはさして進歩はないですね。確かにガイドヘルパー制度は充実してきたけれど、日常のちょっとした外出にもいちいち人に頼まないと出かけられないようだと億劫です。ちょっとそこのコンビニまで飲み物買いに行きたいという時や目的のない散歩のようなときは気軽に一人で出かけたいんですよ。白杖歩行は中途失明の僕にはとても怖かったし、よくいろんなものにぶつかったりしてね、正直不便なことが多かったです。だから念願かなって盲導犬のリチャードがうちに来てくれた時は本当にうれしかったですよ。
盲導犬の良さは、なんといっても自分の意思に沿って行動できるということ。日頃よく行くようなところなら、リチャードが道を覚えてくれて迷うことなくいける。それだけでも視覚障がい者にとってはこの上ない喜びですよ。そして、頼りになるだけでなく、本当に癒されるんですね、この子たちには。おかげで女房とも喧嘩しなくなりましたもんね。幼馴染の友人たちにも、「あんた、顔つきが変わったばい、優しくなったよ」って言われる。小さい時から介助をしてくれていた娘も先日結婚したんだけど、「リチャードがいるから安心してお嫁に行ける。リチャード、これからもお父さん、お母さんお願いね」と涙ながらに言ってくれて、本当にリチャードがいてくれてよかったと夫婦で語り合ったところです。
今や、リチャードなしの生活は考えられない。盲導犬は、もった者でなければわからない楽しさがあるんです。一人でも多くの視覚障がい者にそのことを教えたいですね。

盲導犬の引退時期

盲導犬は年をとって使用者を安全に誘導できなくなる前に引退させます(10歳前後)。引退後の盲導犬はリタイア犬ボランティアさんのお宅でゆっくりと余生を過ごすことになります。盲導犬の継続使用を希望される方には、なるべく間を空けずに次の盲導犬を貸与できるようにします。

盲導犬にならなかった犬はどうなるの?

訓練する中で、盲導犬に向いていないと判断された犬はキャリアチェンジ犬となり、一般のペットとして引き取られます。盲導犬に向いてなかったからといって決してダメな犬ということではありません。犬の個性もさまざまです。盲導犬に向いてない犬を無理に訓練して盲導犬にするのは犬にとっても不幸であり、何よりユーザーを危険にさらしてしまいます。その犬に一番合った進路を考えます。